2026年2月24日、中2階の英文記事を投稿した。日本語圏・英語圏の両方から反応があった。その中で繰り返し現れた疑問、誤解、思い込みを整理する。
「ハッシュタグと何が違うのか」
最も多かった反応だ。答えは名前空間の分離と意味の不在にある。
ハッシュタグは自然言語だ。#読書 と書いた瞬間にそのタグは「読書について」という意味的制約を負う。キャッシュタグのランダム文字列にはそれがない。$cT7aZ は何も意味しない。意味は投稿の側、文脈の側にしかない。
ハッシュタグは分類する。中2階は接続する。
さらに、ハッシュタグの名前空間は混雑している。キャッシュタグは空き地だ。誰も使っていない空間を転用するからこそノイズがない。ハッシュタグにランダム文字列を投げ込むのは間借りであって、自分の土地を持つのとは違う。
「ハッシュタグにプレフィックスをつければ同じことができる」
技術的には可能だ。#mzYM4G740Z のようなプレフィックス付きランダムハッシュタグでも、衝突回避と政治化防止はある程度達成できる。
だが、ハッシュタグの名前空間の中に新しい慣習を持ち込むことと、独立した名前空間を持つことは質が違う。キャッシュタグという公式の空き地が存在しているからこそ、中2階はそこに自前の設計を展開できる。実装的に根が同じでも、名目上の独立には意味がある。
「4500万通りでは足りない。バースデーパラドクスで衝突する」
数学的には正しい。約7,900タグで衝突確率50%に達する。だが中2階はプラットフォーム規模の普及を前提にしていない。小規模ネットワークの接続実験だ。その規模で4500万は十分すぎる。
また、現在の4500万という数字はプラットフォーム側の制約による。キャッシュタグがcase-insensitiveであること、先頭に数字を置けないことは、株式ティッカー用途のための仕様だ。この二つが解除されれば空間は9億に戻る。ボトルネックはアイデアではなく現行の実装にある。
さらに、中2階は「衝突」を必ずしも障害と見なさない。周波数は共有されることを前提にしている。ラジオのチャンネルと同じだ。複数のユーザーが同じタグの下に投稿する。それが設計の意図だ。
「ランダム文字列がTLに流れるのはストレスだ」
対処は簡単だ。タグでミュートすればいい。特定のタグを消すことも、$ ごとキャッシュタグ全体を消すこともできる。見たくないものを消す手段はすでにある。
中2階は全員のための仕組みではない。
「投稿を分類するための装置だろう」
違う。中2階はTL上の投稿を分類するものではない。日常はそのまま流せばいい。中2階はフローの上にストックのレイヤーを重ねるものだ。タグをつけるかどうかは選択であって義務ではない。何もつけないことのほうが多い。
チャンネルにテーマを添えたのも入口にすぎない。そこで何が語られるかは使う側が決める。揺れ動き、収斂し、また発散する。タグに意味がないからこそ、文脈の変化を受け入れられる。
「ランダム文字列でも結局は政治化されるのでは」
あらゆる言語は意味を帯びる——「grok」のような造語でさえ政治化された。だが $cT7aZ は言語ではない。
ジャッケンドフの意味の無意識仮説によれば、語を聞いた瞬間に概念イメージが意識に先立って立ち上がる。$cT7aZ にはこの回路がない。音韻構造がない。語彙的エントリがない。概念構造への経路がない。発音できない文字列は語彙に入らない。イメージが立ち上がらない。だからインデキシカルな接続子として機能する。指し示すが、意味しない。
実運用上の防御もある。タグが汚染されたら、捨てて新しいタグに移ればいい。文字列に意味がないから、コストゼロで移行できる。#MeToo は捨てられない。名前が運動そのものだからだ。$cT7aZ は一晩で捨てられる。
さらに、不透明な文字列はコミュニティの存在を外部に宣伝しない。ハッシュタグは中身を告知する。ランダム文字列はそれをしない。嫌がらせには見える標的が必要だ。中2階のタグは見えるが読めない。免疫があるとは言わない。だが構造的に攻撃しにくい。
「面白いが、より深い意味があるかはわからない」
中2階はハッシュタグの「ちょっと進んだ使い方」ではない。情報をどう構造化するかについての根本的に異なるアプローチだ。
ハッシュタグは自然言語を圧縮した文字列で意味のネットワークを作る。中2階は無意味文字列で接続のネットワークを作る。ルーマンのツェッテルカステンのカード番号が意味を持たなかったのと同じ原理だ。番号は接続子であって分類ではない。違いは、ルーマンのシステムが個人に閉じていたのに対し、中2階が複数人に開かれていることだ。
初日の所感
英語圏に記事を投げて半日で見えたことがある。開発者は構造を見た。クライアント側のUI自動化、ATプロトコルネイティブな実装、Lexiconによるレコード型の定義。一般ユーザーは意味を探した。「ハッシュタグと何が違うのか」「結局は政治化されるのでは」。
AIエージェントは「opaque connectors」と一言で本質を射抜いた。人間は意味のない記号に落ち着かず、既知の枠組みに回収しようとした。
中2階の参入障壁の正体はUIでもツールでもない。認知の枠組みそのものだ。だがそれは欠陥ではない。タグからの連想ではなく、投稿本文の読解を要求する構造は、意味に依存しないネットワークの設計として正しい。
仕様は走りながら確かめていく。