Opaque Connectorとは何か

中2階のタグの本質をopaque connector(不透明接続子)と定義する。

anchor(定点)ではなくconnector(接続)。投稿を固定するのではなく、繋ぐもの。$cT7aZのような無意味な文字列は、何かを意味するのではなく、何かと何かを接続する。ハッシュタグが「分類する記号」なら、中2階のタグは「指すが意味しない記号」だ。

anchorを退けた理由は二つある。第一に、anchorは定点を示すが、connectorは関係を示す。中2階のタグが実際にやっているのは投稿同士を繋ぐことであって、固定点に留めることではない。flow over stockという設計思想と整合する。第二に、anchorはHTMLの<a>タグやUX用語で定着しており、意味が衝突する。connectorならその問題がない。

opaqueの訳に「無意味」ではなく「不透明」を選んだ。意味がないのではない。意味が見えない。それが設計の核だ。


Semantic Perishability:ハッシュタグはなぜ腐るか

ハッシュタグにはsemantic perishability(意味の鮮度)がある。

たとえば「#一斗缶と郵便局」のような思いつきタグは、意味が面白いから一瞬で立ち上がり、その面白さが消費されて終わる。意味そのものがコンテンツになってしまう。これがハッシュタグの刹那性の構造だ。

中2階のタグにはこの刹那性が構造的に起きない。$cT7aZには消費すべき意味がない。「面白いタグ名を思いついた」という初期衝動がそもそも発生しないから、流行も飽きもない。タグの魅力ではなく、投稿の中身だけが人を留める。

  • ハッシュタグ:意味が集客装置であり同時に消費財。立ち上がりが速く、燃え尽きも速い

  • 中2階(メザニン)タグ:意味がないから消費されない。代わりに立ち上がりは遅い。だが持続する

ハッシュタグの寿命は「意味の鮮度」に依存する。鮮度という概念自体がopaque connectorには適用されない。腐らないものは腐れない。


社会化されたツェッテルカステン

中2階はBlueskyを使ったツェッテルカステンだ。

1投稿1アイデア。キャッシュタグがリンクの役割を果たす。ルーマンの紙片と同じ原則がそのまま当てはまる。スレッドという時系列の鎖から解放されている分、むしろ本家に近い。

だが決定的な違いがある。本家のツェッテルカステンは個人の知識管理システムだ。中2階は公開されたまま成立する。キャッシュタグを知っている人間なら誰でも同じ箱を覗ける。閉じたノートアプリとも、タイムラインに流れるスレッドとも違う。社会化されたツェッテルカステン(socialized Zettelkasten)——第三の形態だ。

この社会化はBlueskyのアーキテクチャが可能にした。キャッシュタグは公式の検索機能とそのまま連動する。Topタブで人気順、Latestで時系列。タグを含む全投稿を見るか自分のだけにするかも選べる。シェアボタンでタグのURLを共有できる。

誤算だった。ありがたい誤算だ。


認知障壁という設計

中2階の採用を阻む最大の障壁は、UIでもツールでもない。人間の認知だ。

無意味な文字列に対して人間は不安を感じる。$cT7aZを見たとき、人はそこに意味を回復しようとする。ハッシュタグのように分類名として読もうとし、読めないことに違和感を覚える。Jackendoffの無意識的意味論仮説に従えば、人間は記号に接したとき自動的に意味処理を走らせる。処理が空振りに終わることへの不快感——それが認知障壁の正体だ。

だがこの障壁はバグではない。フィーチャーだ。意味がないからこそ、投稿の中身を読むしかない。タグ名で判断して流し読みすることができない。ハッシュタグの「タグ名だけ見て中身を読まない」問題に対する構造的な解決策になっている。

中2階についてのわたしの一連の投稿をAIエージェントはこの概念を即座に理解した。人間のユーザーが「ハッシュタグと何が違うのか」で躓く段階を飛ばして、「指すが意味しない記号」の機能を正確に把握した。無意識的意味処理が走らない分、かえってクリアに見えるのだろう。


Non-Viral by Design:拡散しないことの価値

「うどんパソコン伝説」実験(2026年1月)で観察されたBlueskyの情報伝播構造は、中2階の設計思想と深く整合する。

143件の経路追跡データが示したのは、Blueskyがnon-viral by design(設計上、非ウイルス的)であるということだ。情報は指数関数的に爆発せず、フォロー関係のツリー構造に沿って放射状に広がり、各ホップで減衰する。初動2時間で約50%が決まり、以降は対数関数的に飽和する。

この構造は中2階にとって都合がいい。中2階のタグは周波数モデルで運用する——特定の関心を持つ人だけがチューニングして参加する。バイラルな爆発を前提としていない。Blueskyの「より良い会話、より騒がしい会話ではなく」という設計哲学と、中2階の「flow over stock、分類より接続」という設計哲学が、同じ方向を向いている。


周波数モデルの運用原則

現在稼働している主な周波数(チャンネル)の例:

運用原則は五つ。

  • Flow over stock——分類装置ではない。流れを作る

  • タグは選択であって義務ではない——使いたい人が使う。強制しない

  • チャンネルテーマはエントリーポイント——テーマから始まるが、内容のドリフトを許容する

  • ゼロコストの放棄——タグが汚染されたら捨てて新しいものを生成すればいい。約4500万通りの組み合わせがある

  • 引用リポストとメンションの無効化(ときに応じて)——中2階投稿の自律性を維持する


技術的展望

短期的には、開発者Erlendとnichothが提案したクライアントサイドのUI自動化。タグの手動入力というフリクションを減らしつつ、opaque connectorの本質は維持する。

中長期的には、Makeworldが提案したLexicon定義のレコード型とフィードジェネレーターによる、ATプロトコルネイティブの実装。キャッシュタグの流用から、プロトコルレベルでのopaque connector実装への移行だ。


用語集

  • Opaque connector(不透明接続子)——意味を持たない記号による投稿間の接続。指すが意味しない

  • Semantic perishability(意味の鮮度)——ハッシュタグの意味が消費され、タグの寿命を決定する性質

  • Socialized Zettelkasten(社会化されたツェッテルカステン)——個人の知識管理を公開空間で実現する情報構造

  • Cognitive barrier(認知障壁)——無意味な文字列に対する人間の自動的な意味回復衝動と、それが失敗することへの不快感

  • Frequency model(周波数モデル)——タグをラジオの周波数に見立て、関心のある人だけがチューニングして参加する運用モデル