ソーシャルメディアにおける相互作用を考察するとき、「反応」と「会話」を二項対立的に捉える傾向がある。しかし、この区分は実態を捉えそこねている。いいね、リポスト、引用、返信といった行為群は、むしろ連続的なグラデーションを形成しており、このグラデーション構造こそがソーシャルメディア研究の核心的な対象となる。

インタラクションの階層構造

Twitter(現X)に端を発し、Bluesky、Threads、Mastodonへと継承されたUIは、以下のような階層構造を暗黙のうちに規定している。

第一層:反応(Reaction)——閲覧、スクロール、滞在。明示的な痕跡を残さない受動的関与である。

第二層:最小限の会話(Minimal Conversation)——いいね、ブックマーク。非言語的だが意図的なシグナルであり、「見ている」ことの最小限の証明として機能する。Goffman(1967)の相互行為儀礼論における「儀礼的承認」に相当する。

第三層:中間的会話(Intermediate Conversation)——リポスト。言語を伴わないが、自己のタイムラインへの引き込みという能動的コミットメントを含む。いいねが私的承認にとどまるのに対し、リポストは自己のフォロワーへの「紹介」行為となる。ここに責任の発生がある。

第四層:狭義の会話(Full Conversation)——返信。言語的やり取りであり、相手の文脈内に参入する行為である。

第五層:拡張的会話(Extended Conversation)——引用ポスト。Bakhtin(1981)のいう「二重声」構造を持つ。他者の発話を保持しつつ、自己の文脈において再解釈を加える。返信より複雑な対話構造を形成する。

「余白」としてのグラデーション

この階層構造が持つ意義は、身体性が希薄なオンライン空間における「余白」の提供にある。

対面コミュニケーションでは、沈黙していても「その場にいる」という関与が成立する。頷き、視線、姿勢といった微細な非言語シグナルによって、関心の度合いを連続的に調整できる。しかしソーシャルメディアでは、沈黙と不在が区別できない。関与を示すには、何らかの明示的行為が必要となる。

ここでグラデーション構造が緩衝材として機能する。いいねは「聞いているが深入りしない」という態度表明を可能にし、返信を強制されない安全地帯を提供する。フォロー関係の本質的な非対称性——見る側と見られる側——を緩和し、「一方的な視聴者」と「対等な対話者」のあいだに中間地点を作り出す。

これはHall(1966)のProxemics(近接学)のデジタル版といえる。対面空間における親密距離・個体距離・社会距離・公共距離の区分が、SNSではインタラクション層によって心理的距離のゾーニングとして再現されている。

UIの「文法」化

Twitter系UIの特筆すべき点は、このグラデーション構造が事実上の「文法」として確立されたことにある。ハートまたは星のアイコン、リポストの矢印、返信の吹き出しという視覚記号は、プラットフォームを超えた共通言語となった。

Kress(2010)のマルチモーダル記号論の用語を借りれば、これは「モード」の標準化である。新規プラットフォームがこのUIパターンから逸脱すると、ユーザーは「読めない」と感じる。恣意的であったはずの記号体系が、規範的拘束力を獲得した状態——これが文法化の証左である。

残された問い

このグラデーション構造は普遍的なものではない。いくつかの問いが残る。

第一に、各層の境界は曖昧である。閲覧ログの可視化(既読表示など)を実装するプラットフォームでは、反応それ自体が会話的色彩を帯びる。

第二に、文化差の問題がある。日本語圏ではいいねが「既読」「了解」の意味を持ちやすく、英語圏より会話的負荷が高い可能性がある。

第三に、引用ポストの両義性がある。対話的な引用と攻撃的な「晒し」は、同一の機能を用いながら正反対の社会的作用を持つ。この区分をどう理論化するかは未解決である。

ソーシャルメディアのインタラクション研究は、これらの問いに取り組むことで、オンラインにおける関係構築の微細な力学を明らかにしていくことになるだろう。


参考文献

  • Bakhtin, M.M. (1981). The Dialogic Imagination. University of Texas Press.

  • Goffman, E. (1967). Interaction Ritual: Essays on Face-to-Face Behavior. Anchor Books.

  • Hall, E.T. (1969). The Hidden Dimension. Doubleday.

  • Kress, G. (2010). Multimodality: A Social Semiotic Approach to Contemporary Communication. Routledge.