前から気になっていた日本語圏SNS独特の習慣がある。リポストした直後に、その感想を別投稿として書く行為のことだ。引用リポストではなく、あくまで「自分のTL上の独り言」という体裁になっている。
これに名前をつけたかった。「あと添えリポスト」と呼ぶことにする。
なぜこの名前か
本来リポストの用途は拡散だが、この用法では他人の投稿を自分のTLに取り込んだ上で感想を添えている。リポストが前置き、直後の投稿が本編という構造だ。元投稿者から見ると、拡散されたと思ったら本編はその直後にあった、という発見がある。
当初わたしはこの習慣を知らず、知ったときは釈然としないものを感じた。だが今はポジティブに捉えている。だからこそ名前を与えたかった。名前がないことも、現象に心がざわつく原因だからな。
空リプとの違い
あと添えリポストを空(から)リプと呼ぶ人を見かける。空リプは「特定の相手に向けた内容を@なしで投稿する」という宛先の問題だ。あと添えリポストはその一形態だが、「リポストを前置きにして感想を述べる」という構造に着目している。
「から」と読むか「エア」と読むかで、宛名のないメッセージを宛先に届けるときの距離の捉え方が変わる。「から」は宛先に密着しているが宛名が空っぽという欠如、「エア」は空中を介して届くという経路が存在するニュアンスだ。
エアリプの一種として空(から)リプを位置づけることはできる。だが人によってニュアンスの捉え方が異なり、同じなのか違うのかがはっきりしない。だからこそ「あと添えリポスト」という行為の手順に注目し、エアリプとは切り離して命名した。
えるたん氏が開発したあと添えリポストの抽出フィード「RepostNextPost」でも、この行為を「リツイート直後のツイートを表示する」と呼んでおり、「空リプ」がフィードの説明に使えるほど人口に膾炙していないことがわかる。これが、あと添えリポストを提案したきっかけでもある。
引用リポストとの違い
学術の世界では引用は当たり前の作法だが、日本語圏のSNSでは元投稿の上にコメントがつく構造からマウントと受け取られることがある。引用ポスト即ブロックという事例もあるらしい。わたしもされたことがある。
引用リポストに通知機能が追加されたことが、あと添えリポストを生んだ可能性がある。ブログのトラックバック的な実装意図だったのだと思う。だが、ただ反応したいだけで議論や会話をしたくない人にはおせっかいな機能追加だった。あと添えリポストはその回避策として発達したのかもしれない。
なぜあと添えリポストが使われるのか
リポストが頻用される理由の一つは、それが会話ではなく反応であることにある。他者に気づかれる形で言葉を発することは相手に触れることであり、会話や配慮が生じる。あと添えリポストはその負荷を回避している。これも一つの礼儀なのかもしれない。
地域性について
えるたん氏によると、RepostNextPostの登録者約7万アカウントのうち95%ほどが日本語圏で、続いて韓国語圏が3%ほど、中国語圏が1%ほど、その他で残り1%とのことだ。日本語圏であと添えリポストが圧倒的に普及していることを示すデータだ。
Mastodonの日本語圏ではさらにエアリプで会話していることも多いという指摘があった。これが成立する要因は利用者の少なさだと思う。TLを見ている人がほぼ共通していれば、宛名がなくても文脈が共有される。エアリプで会話が成り立つのは、小さなコミュニティの特権だ。
表記について
「後添えリポスト」だと「のちぞえ」と読めてしまう。「あと添えリポスト」と表記することにする。
「あと添えリポスト」は「あと添えのあるリポスト」の縮約だ。同じ構造の例として、「味わい弁当」(味わいのある弁当)、「こだわりカレー」(こだわりのあるカレー)、「ゆとり教育」(ゆとりのある教育)、「うるおい化粧水」(うるおいのある化粧水)などがある。
複合名詞の構造について
大田井氏から、ペットボトル、ビール瓶、瓶ビールの例が挙がった。プステヨフスキーのクオリア構造で説明できる。「ペットボトル」は構成役割(素材)、「ビール瓶」は目的役割(用途)、「瓶ビール」は構成役割(容器)。複合名詞の修飾関係はそれぞれ異なる。
タイムラインの意図せぬ配置
リポストの直後に無関係な投稿をすると、あと添えリポストと誤解されかねない配置になることがある。タイムラインは意図を超えて並ぶ。だからあと添えリポストの冒頭に「RP」と付ける人がいるのだろう。